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風の盆恋歌

2022/07/05 05:52:45

   おはようございます。
まさに、嵐の前の静けさ。黒っぽい雲に、生ぬるい風。雨もポツポツ降り出しました。
猛暑続きに、豪雨、電波トラブル、そして台風。
次から次へと、息つく暇もありません。
でも、今朝、家のすぐ近くに公衆電話を見つけたのは嬉しかったですね!
今まで気づかなかったのが不思議です。

 先日ご馳走様いただいたお礼状の時候の挨拶で頭を悩ませていましたが、ちょっと素敵なものを見つけました。
「都会ではなぜか天の川も見られませんが、ふと夜空を見上げ、気分だけでも七夕にひたってみました」
七夕が近づいているので、こんな挨拶もロマンチックだなと思いながら、七夕伝説のことを考えていました。
一年に一度、7月7日の夜にだけ天の川を渡って会うことを許された織姫と彦星の話です。

 「一年に一度の逢瀬」、そんなおとなの恋を描いた小説があります。高橋治の「風の盆恋歌」です。
若い頃、互いに思いを通わせながら別れた男女が、20数年の時を経て、愛を育むという物語です。
それぞれに家庭をもつふたりは、毎年、風の盆の3日間だけ富山県八尾で過ごします。
不倫には違いないのですが、それだけでは片付けられない哀切な恋愛小説です。
そしてまた、ところどころにある酔芙蓉の描写がとても美しいのです。

 「散るまでに一度は酔いたい、あの酔芙蓉のように」
儚い花ほど人は、愛おしいと思うようです。
それは限りある生を、精一杯に彩ることへの憧れなのでしょうか。
ふたりにとっては、この3日間だけが自分の生きた意味を全身で感じることができる現実。残りの362日は、夢か幻だったのだと思います。

 まるで酔芙蓉のような、ふたりの恋。
儚い命であることがわかっていても、紅色に咲き誇る花なように、ふたりは一年に一回の逢瀬にすべてをかけていたのでしょう。
「しのびあう恋 風の盆」

 風の盆とは、富山県八尾町で、毎年9月1日〜3日まで行われる祭りです。
踊りを踊る女性たちの細やかな手振りやしなやかな動きが、えもいわれぬ情緒を漂わせます。
それが、愛する人への決意を伝えているようにも見えます。
その溢れんばかりの思いが、酔芙蓉の花となぜか重なってしまうのです。

 今日も、よい一日をお過ごしください。

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