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オコゼの舞

2022/08/01 06:00:32

  おはようございます。
日の出少し前ですが、あたり一面に響く蝉の鳴き声、その合間を縫うようにしてわずかに聞こえる鳥たちのさえずり、人間よりもかなり早く起きて活動をはじめていますが、そこに何とも夏らしい風情を感じました。
また、朝焼けもとても綺麗でした。
いつもより雲が少なかったので、きっと今日はとてもよいお天気なのでしょう。

 2匹のお魚は、とても仲がよさそうでした。
くるっと体をクネらせて水槽の中央で顔を合わせ、斜めにすれ違うようにして水槽の端へ。そしてまた水槽の真ん中へと。
ずっとその繰り返しでした。
体をクネらせて向きを変えるたびに、尾ひれが水に靡いてひらひらと揺れていました。

 まるで、美しい舞を観ているようでした。
そう思うと、2匹が向き合ったときは口づけを交わしているようにも見えました。
もしかしたら、恋人同士だったのかもしれません。そして、愛の告白をしていたのかもしれません。
ところが2匹のうちの片方が、容赦なく網ですくわれてしまいました。
一瞬の出来事でした。

 しばらくすると、艶々の白身の刺身が出てきました。
身は歯応えもよく白身らしい淡白な味わいのなかにも、上品な美味しさがありました。
見た目、棘のあるグロテスクな外見とは似ても似つかないものでした。
さすがに高級魚といわれるだけあるオコゼでした。
とり残された1匹は、相棒を食べている私を、恨めしそうに見ているような気がしました。

 オコゼは、別名ヤマノカミと呼ばれています。オコゼの干物を山の神に供物する風習があったことによるそうです。
これは、山の神は不器量なうえに嫉妬深い女神で、見にくいオコゼの顔を見ると安心して怒りを鎮めたという話に由来します。
山の神はオコゼ欲しさに何度も願いを聞いてくれるということから、オコゼを山の神に奉って儲けたという伝承がいくつか知られています。
また、オコゼそのものに神の力が宿っているとされる漁師の話もあります。

 オコゼは、海で獲れるけれども山の神とも呼ばれる海と山を繋ぐ不思議な魚です。
残された一匹に睨まれながらも、刺身に唐揚げにとまるごといただいてしまいました。
もしかしたら、山の神のご利益があるかもしれません。

 今日も、よい一日をお過ごしください。


 

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